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JAFの趣味なページ

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飛行機の飛ぶ原理と翼の数


複葉機 ソッピースキャメル

飛行機には単葉機、複葉機、三葉機などと呼ばれる種類分けがありますが、これはただ単純に主翼の数で区別したものです。戦闘機だろうと爆撃機だろうと旅客機だろうとお構いなしです。

現在の飛行機はその殆どが単葉機になっていますが、初期の飛行機は殆どがいくつかの主翼を持っているタイプでした。ライトフライヤーも複葉機です。しかしそれは時代と共に廃れていきます。何故でしょうか?


ここで考えなくてはならないのは「何故何枚も翼が必要なのか?」です。
それを理解するためには飛行機の飛ぶ原理というものを理解する必要があります。が、その飛ぶ原理を詳しく書こうとすると論文が1つ出来上がってしまいます。よってかなり簡略に書こうと思います。

しかしそれでもやはりある程度難しくなること必至なので、今回の「翼の数」の部分を理解するのに必要な知識を纏めると以下だけです。

1、飛行機は翼で揚力を発生させている
2、揚力が発生するには流体の流れ、すなわち風が必要
3、飛行機の場合、自ら前進することで相対的に風を生み出す
4、翼が増えると、抵抗も増える


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飛行機の翼やヘリコプターのローターブレードというものは極端に表現すればこのような形になっています。身近なところで竹とんぼもこのような形になっています。周りの矢印は翼を上に持ち上げようとする力、すなわち揚力が発生している場合の空気の流れです。一応風洞実験の試料に基づいてはいますが結構大雑把です。参考までに。
翼の周りの気流 大雑把です


さて、この時翼の周りには、翼の上下面を循環しようとする空気の流れが生まれます。ただしそれは空気そのもの、つまり流体粒子が実際に循環するわけでなく、あくまで瞬間の力のベクトルをつなげると線になり、循環するという意味です。
翼の周りの循環

循環の生まれる原因ですが、本来迎え角を取っただけの状態の場合、下面を流れていた気流の一部が遅れている上面に進入します。流体は上面に回りこむ際に相対的に非常に速い速度になりますが、上面に流れ込んだ瞬間上昇している静圧で押し戻されることによって減速し、さらに上面を流れる気流にぶつかって急減速し、運動エネルギーを失って翼から離れ、渦が発生します。ヘルムホルツの定理によれば「流体には,渦の強さは保存されなければならないという性質を持っている」そうなので、それに対して同エネルギーを持った渦が必要となります。その渦が「循環」であるわけです。この渦と循環は流体の粘性が必要であり、理想流体では発生しませんが、現実の空気は粘性を持つため発生します。
同エネルギーの渦が相殺するために最初の図のような滑らかな気流が生まれます。

本来迎え角を翼がとり、それに対して流れるだけの気流では揚力は発生しません。ただ流れているだけだからです。具体的には翼上面と下面の気流の速さが同じなのです。しかしその同じである状態の気流にこのベクトルを加えることで上面は加速し、下面は減速、ここに速度差が生まれます。

そして、流体の流速が速い場所においては静圧が低くなり、遅い場所においては静圧が高くなるので、その圧力の総和から垂直方向すなわち上に向けての力、つまり揚力が発生します。

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以上かなり端折った揚力発生のメカニズムです。
正直端折りすぎて理解はかなり困難になってしまったと思います(笑)


さて、本題。
何故複葉機以上の多翼機は廃れて行ったのかです。

飛行機が登場したばかりの時代、すなわち20世紀初頭は強力なエンジンが殆どなく、それをつけてもスピードは殆どで無いというのが当時の事情でした。しかしスピードが出なければ十分な揚力が発生せず、飛び上がることができません。そこで翼の面積を増やすことで揚力を増加させようと先人は考えたのです。基本的に発生する揚力は面積の増加に比例すると考えてよいので、翼を2枚にすれば2倍、3枚にすれば3倍の揚力が生まれます。これによって飛行が可能となるのでした。
例外として旋回性能向上や安定性向上のために、十分な速力を得られたとしても多葉の形をとっている機体もありますが、基本的には飛ぶためのものと考えてよいでしょう。

しかし第二次世界大戦も近づいた頃、強力なエンジンが開発されるようになり、必ずしも翼を多くしなくとも飛行は可能になりました。すると2枚目3枚目の翼は余計なものということになり、旋回性能を良くしたいなどという目的がない限りはただ抗力をいたずらに増大させるだけの代物となりました。
戦闘機の話になりますが、1対1ならともかく実際の戦闘において大切なのは速度性能です。旋回性能など二の次です。
よく「零戦は旋回性能でアメリカ軍を大きく上回っており無敵を誇った」というような記述を見かけますが大間違いです。確かに1対1の巴戦(格闘戦)に持ち込んだ場合F4FやP-40に比べて有利になったのは確かですが、故坂井三郎氏著の「大空のサムライ」を読んでも分かるようにその戦果の大半は敵に気付かれないように接近しての編隊による一撃離脱です。
どんなに旋回性能で上回っていたところで敵のほうが速ければ逃げられてしまうわけです。実際太平洋戦争後半には速度性能に勝るF6Fの一撃離脱に大いに苦しめられることになります。それ以前もP-38の一撃離脱にも苦しめられています。
もし旋回性能が空戦において最も重要な要素であれば、戦闘機は現代に近づけば近づくほど弱くなっていることになってしまいます。だれも零戦がソッピーズキャメルより弱いとは考えないし、またF-15が零戦より弱いとも考えないでしょう。

さて、旋回性能より速度性能、というのは分かっていただけたと思いますが、複葉機の場合単葉機よりも抗力が増大し速度の伸びを阻害してしまうのは明らかです。よって速度を重視する飛行機業界では複葉機は消えていってしまった、というわけです。

個人用の速く飛ぶ必要が全くなく、またエンジン出力も低い軽飛行機や、それこそ旋回性能が第一義のアクロバット機などではまだ複葉機などが使い続けられていますが、おそらく主力が複葉機に戻る、といったことは未来永劫ないでしょう。


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